分子細胞生理学・神経科学・内分泌学

坪井 貴司 教授(統合生命科学コース)   研究室HP

 坪井研究室では、「情動」や「食欲」など、私たちの精神活動や行動がどのようにコントロールされているのかについて、神経や内分泌細胞から分泌される神経伝達物質やホルモンを、生きた細胞から直接可視化することで解明を目指しています.
 私たちの体内(脳だけでなく、消化管や内分泌器官)には、多種多様な神経伝達物質やホルモンが存在します.神経伝達物質やホルモンの分泌は、何百種類ものタンパク質(分泌制御タンパク質)が共同してコントロールしていると考えられています.この分泌機能に障害が起こると、「情動」や「食欲」など、私たちの精神活動や行動に異変が生じます.具体的には糖尿病やうつ病において、この分泌制御タンパク質群に異常があることが明らかになってきました.
 この異常が、分泌機能へどのような影響を与え、私たちの精神活動や行動に異変を生じさせるのか?これらの疑問を坪井研究室では、生きた細胞を用いたバイオイメージング解析やモデル動物を用いた行動実験を通して、解明することにチャレンジしています.

図1. 膵β細胞からのインスリン分泌像

 図1は、膵β細胞のインスリン顆粒だけを特異的に遺伝子組み換え技術により緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識し、細胞表面だけを観察できる全反射蛍光顕微鏡でイメージング解析した像です.グルコース刺激によって、四角で囲ったインスリン顆粒が0.6秒後に突然明るくなり、その直後消失する反応、つまり生きた細胞からのインスリン分泌を世界で初めてイメージングすることに成功しました.

図2.生きた細胞からのホルモン分泌反応動画

 図2は、副腎髄質クロマフィン細胞からのカテコールアミン分泌のリアルタイム動画です.現在は、この分泌可視化解析技術を用いて、消化管(胃や小腸)がどのように摂食情報を感知し、食欲ホルモンを分泌するのか、体内時計がホルモン分泌(特に食欲ホルモンやインスリン)をどのようにコントロールしているのかを解析しています.

 我々がチャレンジしているホルモン分泌可視化解析は、近年注目を集め、将来のさらなる発展が切望されている研究分野です.生理学、神経科学、内分泌学、バイオイメージングやナノテクノロジーのアイディアを駆使してを私たちの精神活動や行動がどのように制御されているか解明する、という新しい挑戦を坪井研究室で一緒に始めてみませんか.