統合自然科学科の卒業生

Graduates

本学科(前身である基礎科学科を含む)をご卒業された先輩たちです。

卒業年 氏名 現在の所属
1966年 海部 宣男 国立天文台 名誉教授・元台長、元 国際天文学連合会長、1998年日本学士院賞
1967年 大隅 良典 東京大学 特別栄誉教授、2016年 ノーベル生理学・医学賞
1967年 渡邊 公綱 東京大学 名誉教授(生命科学)
1969年 兵頭 俊夫 東京大学 名誉教授、元日本物理学会会長
1970年 氷上 忍 東京大学 名誉教授(物理学)
1971年 小泉 英明 日立製作所 役員待遇フェロー
1971年 小宮山 進 東京大学 名誉教授(物理学)
1972年 有坂 文雄 東京工業大学 名誉教授(生命科学)
1974年 石浦 章一 東京大学 名誉教授(生命科学)
1974年 遠藤 泰樹  東京大学 名誉教授(化学)
1980年 北森 武彦 東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻 教授
1988年 白髭 克彦 東京大学 定量生命科学研究所 教授・所長
1994年 木原 大亮 米国Purdue University, Professor(生命科学)
1994年 鳥井 寿夫 東京大学 教養学部 統合自然科学科 准教授(物質基礎科学コース)
1997年 矢島 潤一郎 東京大学 教養学部 統合自然科学 科准教授(統合生命科学コース)
2000年 大久保 將史 東京大学 大学院工学系研究科 化学システム工学専攻准教授
2000年 豊田 太郎 東京大学 教養学部 統合自然科学科 准教授(物質基礎科学コース・統合生命科学コース)
2001年 若本 祐一 東京大学 教養学部 統合自然科学科 准教授(物質基礎科学コース・統合生命科学コース)
2002年 坂口 菊恵 東京大学 教養学部附属 教養教育高度化機構 初年次教育部門 特任准教授
2006年 吉江 路子 産業技術総合研究所 研究員、2008年東京大学総長賞、2011年日本学術振興会育志賞
2010年 高橋 望 東京大学 教養学部 統合自然科学科 助教(統合生命科学コース)
2013年 野口 誉之 東京大学 教養学部 統合自然科学科 助教(統合生命科学コース)
2013年 前田 海成 東京大学 教養学部 統合自然科学科 助教(統合生命科学コース)
2018年 柏倉 沙耶 東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 修士課程1年、卒業研究で2018年東京大学総長大賞を受賞
  • 原田 一貴

    2014年 卒業

    原田 一貴

    東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻生命環境科学系 助教

    あえて駒場の理系を選ぶ猛者大歓迎!

    「教養学部って何」

    「東大なのに赤門通ってないの」

    何度聞かれたことかわかりません。そして私自身も1年生の時はそう思っていました。

    東大の後期課程進学先の中にひっそりと存在する「教養学部」。そう、教養学部は1・2年生だけの居場所ではなく、3・4年生や大学院生も所属できる場所なのです。

    生物が好きなのに数学や物理が苦手で、漠然と文系職に就こうと思って文科一類に入学したはいいものの、最初の学期で法律に挫折し、文系向けの生命科学の授業に最も興味を持っていた私は、紆余曲折の果てに理転し、教養学部後期課程にお世話になることになりました。いつの間にか大学院の博士課程までずっと駒場に在籍し、今でも教員として駒場にいます。

    他の先生方もおっしゃっている通り、この統合自然科学科には学際的・分野横断的な研究の伝統と文化があります。しかしそれと同等に素晴らしいのは、「多様な学生を受け入れる懐の深さ」だと思っています。私のように文理をまたいで進学する、あるいは卒業研究や大学院進学のタイミングで思い切って専門を変えるなど、様々なモチベーションを持った学生の希望が実現に近づくよう、学科としても努力し続けています。

    また、教員数の多さも大きな魅力です。一般的な理系の学科では、学生に対して教員の数は少なく、卒業研究で一人の教員の研究室に多数の学生が配属されることがほとんどです。もちろん大人数で研究できるメリットもたくさんありますが、学生の興味関心にぴったり合った研究室が見つかりにくいこともあります。それに対して、統合自然科学科には多数の教員が在籍しており、卒業研究での選択肢がたくさん用意されています。ぜひ、教員紹介ホームページから、いろいろな先生方のプロフィール、研究室ウェブサイトを覗いてみてください。

    世間一般から見たらマイナーな進学先と思われるでしょうし、就活の自己紹介で苦労することもあるでしょう。しかし世界を動かすのは奇人変人です。勇気ある挑戦をしかけてくれる学生さん、ようこそ統合自然科学科へ!

  • 木村 太郎

    2007年 卒業

    木村 太郎

    Institut de Mathématiques de Bourgogne, Université de Bourgogne (ブルゴーニュ大学 数学研究所 (フランス)) Maître de Conférences (助教授)

    自身を見つけ,育てる

    駒場の魅力は何でしょう.なかなか一言では言い表すのは難しいのですが,あえてキーワードを一つ挙げるとすると,その「多様性」ではないでしょうか.教養学部には前期課程から後期課程,そして大学院総合文化研究科と幅広い世代の学生が在籍し,また学問領域としても広範な分野を網羅しています. 私も実際に9年間の学生生活を駒場で過ごしましたが,こうした駒場の多様性の恩恵にあずかってきたと強く実感しています.

    大学入学当初から物理学に興味を持っていたのですが,いわゆる王道の物理とは違ったことをしたいという天邪鬼な性格から前期課程は理科二類を選びました.その後,よく文科系の友人とつるんでいたのもあって,人文科学系の講義に数多く出てみましたが,いざ進振りの折になってみるとやはり物理学系の学科への進学を考える様になり,後期課程は基礎科学科 物性科学分科 (当時) へと進学しました. 意外に認識されていない様ですが,東京大学で数学に始まり物理・化学・生物と自然科学各分野を専門的に学べるのは統合自然科学科だけです.これが決め手でした.進路に迷っていた当時は,選択肢を狭めない選択,を心がけていました.一見消極的なフレーズにも聞こえますが,以下でも述べる様にこれが功を奏したと思います.

    後期課程で様々な分野の講義に出てみて実感したのは,ある程度専門的な内容に突っ込んでいかないと,その分野の本当の面白さは体感出来ない,ということです.もちろんその意味では最先端が一番面白いのですが,本学科は先生方との距離が近く,例えば毎学期あるセミナーではそうした最先端の雰囲気を知る絶好の機会です.現在は理論物理学,中でも場の量子論と呼ばれる普遍的な手法の数理的基礎付け,およびその物性科学分野や,素粒子・原子核分野などへの応用を主たる研究テーマとしています.大学に入るまで数学・数理科学に対して苦手意識はありませんでしたが,特に積極的な感情もありませんでしたし,物性科学という分野に至っては大学に入ってから耳にしたもので,ひとえにこれらの分野への興味は後期課程での講義やセミナーを通じて養われたものです.この様に,自分のやりたいこと,は自ら体得していくものですが,駒場の多様な選択肢の中で興味を育むことが出来たことがその後の研究生活の確固たる礎になっています.

    しばしば「あなたの専門は何ですか?」と聞かれます.物理の中でも物性分野の人からは素粒子の人,素粒子分野の人からは物性の人,とよく呼ばれます.あるいは物理ではなく数学の人,と称されることもありますし,一方で数学の人からは物理の人と呼ばれます.個人的にはただ一つの自然哲学を自分なりに追求しているだけなのですが,たまたま他の人とは違うことをやっている様に見えるのかもしれません.分野横断・異分野交流が取り沙汰されて久しいですが,discipline はあくまで人が勝手に決めているもので,そもそも分野間に境界は存在しない,という価値観を共有する雰囲気が駒場にはあります.一方で研究者として自身の研究を創り上げていくにはコアとなる専門性が不可欠ですし,それはもちろん研究者に限った話ではありません.確固たる専門性に依拠した思考様態を形成すること,それなしでは現代の様な情報過多社会を自立的に生き抜くことは出来ません.型を会得した人間がそれを破ることを「型破り」というのであって,型のない人間がそれをやろうとするのは,ただの「形無し」である,という言葉を耳にしますが,後期課程はこの型を醸成する上で重要なタイミングです.ぜひ駒場の多様な環境の中で自分だけの興味の種を見つけ出し,育て上げてみてください.

  • 若本 祐一

    2001年 卒業

    若本 祐一

    東京大学大学院総合文化研究科 複雑系生命システム研究センター 准教授

    駒場には半世紀にわたる学際教育・研究の実績がある

    最近では「学際」がちょっとしたブームになっていて、世界のあちこちの大学で「学際」をうたう新学科が設立されています。しかし、その実態は水と油をひとつの容器に移しただけ、「異分野融合によるイノベーション」てな感じの分かるような分からないような、、、宣伝はハデだが中身は何も変わっていない、というのも珍しくありません。

     「学際」がなかなかうまくいかない理由のひとつは、多くの場合、異分野の研究者を集めて「はいどうぞ、一緒に頑張って下さい」という状況を単に作っているだけという点です。私は海外も含めて学際研究を謳う大学をいくつか見てきましたが、その中で「学際的思考は一個人の中で結実していなければダメ」と確信するようになりました。単に異分野の専門家を集めた烏合の衆ではうまくいきません。

     駒場には半世紀にわたる学際教育・研究の実績があります。私も学生としてその恩恵にあずかりました。学部生の頃は、誰もが聞いただけで分かる専門分野をもっていないことに対するもどかしさ、不安のようなものもありましたが、今となっては自分が興味をもっておこなっているこの研究が「専門」だと胸をはって言えます。自然科学の研究は自然に対してするのであって、本来はひとつの対象のはずです。「分野」はあくまで人が便宜上分類したものにすぎません。本来自分の興味がうまく既存の分野にはまるということの方が珍しいのではないでしょうか。

     今回統合自然科学科として、駒場の後期課程の学科が再編成され、学生にとってはより自由度の高い学科として生まれ変わります。まさに学生自身が専門をみずからデザインすることを可能にする学科と言えるでしょう。そして、自分の興味を深くつきつめたいと思えば、それをアシストしてくれる素晴らしい教員陣がすぐ近くにいます(正直自分ももう一度入りたいぐらいです)。駒場は悪くいえば雑多で混沌とした環境かもしれません。しかしだからこそ、新しいものが生まれそうな予感もします。実際、分野の壁などお構いなしに自分の興味をつきつめ、ユニークな研究を展開している学生を見ると、これは確信に近いものを感じます。ぜひ多くの人が統合自然科学科に興味をもち、駒場から新しい科学を世界に発信してくれれば嬉しく思います。

  • 豊田 太郎

    2000年 卒業

    豊田 太郎

    東京大学大学院総合文化研究科 相関基礎科学系 准教授

    教科書にないアドベンチャー

    統合自然科学科の前身である基礎科学科を卒業して早11年が経ちましたが、基礎科学科で培った経験は、知的欲求にかられたアドベンチャーを続ける私には脈々と活きています。

     振り返れば私は、いわゆる進振りの段階までに、漠然とした疑問をもっていました。ジャーナリストを目指していた一人の友人と食事をしていた時に、その友人は、政治学、社会学、哲学、宗教学、統計学などを学び、それらから自分なりのジャーナリズムの何たるかを構築してゆきたいと語り、そこで私の疑問が明確になりました。それは、研究者という職業を選択肢の一つと考えている自分にとって、量子力学、統計力学、有機化学、無機化学、細胞生物学などの講義を学ぶだけで、「自分なりの新しい学問」を構築できるだろうか、というものでした。この疑問をもった私は、細胞生物学と統計力学をつなぐ講義や、有機合成化学と量子力学をまたぐ実験実習など、基礎科学科の講義や学生実験、そして卒業研究を通じて、幸いにも答えの糸口を見出すことができました。それが、有機合成化学というアプローチで生命の起源にもせまる「生命らしい」物質を合成することができるのか、という研究テーマであり、基礎科学科を卒業し大学院(総合文化研究科)で博士学位を取得した後も今なお、私はこのテーマに挑戦し、教科書にないアドベンチャーを続けています。

     理学部や工学部でも、皆さんの知的欲求-例えば、真理を追究したい、人の役に立つものを創りたい-は満たされるでしょう。しかし、そうした学問的探究活動の根本は従来からあまり変わっていないようです。実は、科学技術の最前線に目を向けると、教科書に書いてある内容でさえ変化し更新され、新しい学問体系が構築されています。産業界でも、皆さんが会社に就職してから退職するまでの約40年間でさえ、一つの事業や製品にとらわれることなく、変動する社会に伴って日々進化しています。そのようにダイナミックな学問体系を現在まさに構築している研究者である先生方が集い、今後も多様に変化しうる社会のニーズへ自然科学の広い視野をもって活躍してゆく友人達が集結している学科、それが、基礎科学科から続く統合自然科学科の真の姿だと確信しています。

     分野にとらわれない知的欲求と各分野のバックグラウンドとをもった基礎科学科の先輩、同期、後輩とは、基礎科学科に在籍していた当時も、卒業した後も変わらず、「なぜその研究は面白いのか」とよく語り合います。彼らとの語り合いがまさに、新しい学問体系を構築するアドベンチャーの原動力であり、基礎科学科の先生方は当時の我々の語り合いを見守ってくださっていたのだと、統合自然科学科の教員として働き始めて気づいた今日この頃です。